第80回セミナー

日時: 2019年10月18日 (金) 13:00 – 14:30
場所: 電気通信大学 東3号館(学内マップ:27番) 最後のページ 306室
講師: 牛田 享宏 (愛知医科大学 学際的痛みセンター、運動療育センター 教授)
司会: 小泉 憲裕 准教授
題目: 運動器疼痛と脳機能変化
概要: 痛みは脳で経験する不快な感覚と情動体験であると定義されています.すぐに治る痛みであれば日常生活への影響は少ないですが、それが治らずに長引き治療抵抗性であるなどすると直接的な局所の障害にとどまらず,痛みに伴う身体の障害が疼痛行動も相まって我々の生活を大きく変えてしまいます.
特に我々は非常に治療に難渋する複合性局所疼痛症候群(以下CRPS)症例に着目し,その病態メカニズムについて研究を行ってきました.これまでの研究では,病期の長いCRPS患者では対側の視床の活動性が低下すること,疼痛部位に機械的な痛み刺激を加えた際にも視床の活動性の亢進が見られないことが明らかにされてきています.一方これらの患者では疼痛部位を触られているビデオを見る事で仮想的に痛みを経験させるだけでも非常に強い不快情動と前帯状回の活動を生じさせる事,アイトラッキングメガネを用いた研究ではこれらの患者では疼痛部位を視認せず避けたり,無視する傾向が観察されています.すなわち痛みは脳で記憶されたものでもあり,これらに伴う自動思考から生じる疼痛行動も2次性,3次性に身体機能障害(不動からの廃用や関節拘縮,筋萎縮など)を引き起こすことになると考えられます.近年,帯状回から脊髄後角への神経伝達経路も指摘されてきており,情動系が感覚に影響していくことについても考慮する必要があります.
我々は基礎研究で不動化モデル動物を作成し,廃用に伴う中枢神経系の機能変化について注目し研究を進めてきましたが,廃用動物では脳の感覚野のみならず運動系でも変化が生じるという報告もあります.従って今後は脳機能制御という面からの治療戦略を考えていく必要があります.
参加: 参加費無料,予約不要
問合せ 山野井 佑介,Tel: 042-443-5403,  e-mail: yamanoi@hi.mce.uec.ac.jp

 

第79回セミナー

日時: 2019年7月9日 (火) 13:00 – 14:30
場所: 電気通信大学 東3号館(学内マップ:27番) 最後のページ 306室
講師: 篠崎 隆志 (大阪大学 CiNet(脳情報通信融合研究センター) 研究員)
司会: 庄野 逸 教授
題目: 畳み込みニューラルネットワークに見る脳の情報処理機構
概要: 深層学習の基盤技術のひとつである畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network, 以下CNN)は脳における情報処理機構をヒントに構成されたもので、従来の機械学習では困難であった、超多次元信号の解析可能な次元数への縮減を実現し、これによって人工知能技術の様々な対象への応用を可能としてきました。本講演ではCNNの内部動作を、脳における視覚情報処理と対比させることによって、その情報処理過程における意義について明らかにします。さらに超大規模なCNNの実現のために、より脳に近い、逆行伝播誤差を用いない学習法についても紹介します。
参加: 参加費無料,予約不要
問合せ 山野井 佑介,Tel: 042-443-5403,  e-mail: yamanoi@hi.mce.uec.ac.jp

 

第78回セミナー

日時: 2019年6月14日 (金) 15:00 – 16:30
場所: 電気通信大学 東4号館(学内マップ:11番) 802会議室
講師: 饗場 篤 (東京大学 大学院医学系研究科 附属疾患生命工学センター 教授)
司会: 松田 信爾 准教授
題目: 精神疾患モデル動物の作製と解析
概要: CRISPR/Cas9システムを用いたゲノム編集技術により、動物に導入する遺伝子変異の種類や変異を導入する動物種の制約が大幅に少なくなりました。我々の研究室では2種の遺伝性疾患、22q11.2欠失症候群および結節性硬化症に対するモデル動物の作製と解析を行っています。22q11.2欠失症候群は、ヒト22番染色体の微細欠失が原因で、患者の多くでは45の遺伝子の欠失が生じ、約30%が統合失調症を発症します。また、結節性硬化症は、TSC1もしくはTSC2遺伝子の変異が原因で、細胞増殖・成長に関与するmTOR経路の活性化が生じ、高頻度で自閉スペクトラム症等の精神疾患を発症します。本講演では、変異動物を用いた精神疾患モデル動物の現状と課題について議論したいと考えています。
参加: 参加費無料,予約不要
問合せ 山野井 佑介,Tel: 042-443-5403,  e-mail: yamanoi@hi.mce.uec.ac.jp

第77回セミナー

日時: 2019年5月31日 (金) 13:00 – 14:30
場所: 電気通信大学 東3号館 306会議室
講師: 太田 聡史(理化学研究所 光量子工学研究センター画像情報処理研究チーム 専任研究員)
司会: 山﨑 匡 准教授
題目: 内骨格ロボットスーツ(StillSuit)と高精度拡張/仮想現実(LVAR)を用いた認知・運動介入による人間拡張
概要: 私たちは産業技術総合研究所との共同研究において、認知・運動介入を実現するためのツールとして,高精度拡張/仮想現実(LVAR)と統合された内骨格ロボットスーツ(StillSuit)を開発しています。その目的は,生物学的に合理的な介入による認知・運動機能の強化と回復(生物学的な人間拡張)をもって,日本の直面する超高齢化問題の解決に貢献することです。そのためには、脳機能と運動機能の統合的な理解が欠かせません。内骨格ロボットスーツ開発のための基礎データの収集の一環として,遺伝学と生体力学を組み合わせた新しい枠組みと,モデル生物から得られるディープデータをヒトに外挿する方法について紹介します。また将来展望として、脳計算モデルと神経筋骨格モデルを結合する手法についても議論したいと思います。
参加: 参加費無料,予約不要
問合せ 山野井 佑介,Tel: 042-443-5403,  e-mail: yamanoi@hi.mce.uec.ac.jp

 

第76回セミナー

日時: 2019年5月10日(金)16:00 – 17:00
場所: 電気通信大学 東3号館 306会議室
講師: Zineb ABDERRAHMANE (École Nationale Supérieure d’Hydrauliqur, Blida, Algeria.)
司会: 宮脇 陽一 教授
題目: Haptic recognition of daily-life objects capable of dealing with data scarcity
概要: Recognizing surrounding objects is an important skill for the autonomy of robots performing in daily-life. Nowadays robots are equipped with sophisticated sensors imitating human sensing capabilities such as touch. This allowed to integrate information about object texture, compliance and material ensuing from robot-object physical interaction to the recognition . In this thesis, we aim to exploit machine learning techniques to perform haptic recognition of daily life objects. The main challenge faced in this work is the scarcity of haptic training data for all daily-life objects. This is due to the continuously growing number of objects and the effort and time needed by the robot to physically interact with each object for data collection. We solve this problem by developing a haptic recognition framework capable of performing Zero-shot, One-shot and Multi-shot Learning. We extend this framework by integrating vision to enhance robots performance.
参加: 参加費無料,予約不要
問合せ 山野井佑介,Tel: 042-443-5403,  e-mail: yamanoi@hi.mce.uec.ac.jp

 

第75回セミナー

日時: 2019年4月22日(月)13:30 – 15:00
場所: 電気通信大学 東3号館 306会議室
講師: 小野 誠司(筑波大学体育系・准教授)
司会: 岡田 英孝 教授
題目: 眼球運動から読むアスリートの脳機能
概要: 様々なスポーツ場面では、ボールや相手の動きなど視覚対象に応じて適切な運動を実行する必要性があり、視覚を通して得られる感覚情報は運動の発現と調節に重要な役割を果たしています。特に、熟練した球技選手は眼や頭部の動きによる効果的な視覚探索方略を用いて適切な視覚情報を獲得していると考えられています。このような視覚に基づくアスリートの卓越した情報処理能力は如何にして実現されているのでしょうか。これまでの研究において、眼球運動は視覚情報の影響を強く受けること、またその動的特性と脳機能との関連性が明らかにされていることから、上位中枢による視覚情報処理の特徴を調べるうえで有効な指標とされています。本講演では、アスリートの持つ眼球と頭部の動きを制御する脳機能の特徴についての研究を紹介します。
参加: 参加費無料,予約不要
問合せ 山野井佑介,Tel: 042-443-5403,  e-mail: yamanoi@hi.mce.uec.ac.jp

 

第74回セミナー

日時: 2019年3月8日(金)13:00 – 14:30
場所: 電気通信大学 東4号館802会議室
講師: Zoltan Ungvari (Professor, Reynolds Oklahoma Center on Aging, Dept. of Geriatric Medicine, University of Oklahoma Health Sciences Center, Oklahoma City, USA)
司会: 正本和人教授
題目: Aging-induced neurovascular dysfunction: novel mechanisms(加齢による脳神経血管の機能障害:新しいメカニズム)
概要: 加齢による脳機能の低下が、脳血管の障害や脳血流の低下に関係して生じていることが明らかになってきました。このような脳機能の低下を抑制し、高齢になっても正常な脳の機能を維持するために、運動や食事による間接的な、あるいは脳を直接活性させることで脳の血流を直接的に高める方法が有効とされています。本セミナーでは、脳の血流を調節する働きのなかでも、特に血管の形状や毛細血管の血流を維持する内皮細胞の働きに注目した神経血管変性の新しいメカニズムについて、血行力学的な側面を含めて講演します。(Ungvari先生は、現在オクラホマ大学の老化研究の教授であり、Journal of Gerontology: Biological Sciences, the American Journal of Physiology-Heart and Circulatory Physiology, GeroScience: the official journal of the American Aging AssociationのEditorを務めています。195本以上のoriginal paperをpublishしており、Nature Reviewに掲載された最新の総説論文(Ungvari Z, et al., Endothelial dysfunction and angiogenesis impairment in the ageing vasculature. Nat. Rev. Cardiol. 2018 Sep;15(9):555-565.)を中心にご講演を頂きます。)
参加: 参加費無料,予約不要
問合せ 山田幸生,Tel: 042-443-5220,  e-mail: yukioyamada@uec.ac.jp

第73回セミナー

日時: 2019年2月22日(金)13:00 – 14:30
場所: 電気通信大学 東3号館306会議室
講師: 管 小荣 (GUAN Xiaorong)(南京理工大学機械工学科・准教授)
司会: 姜 銀来 准教授
題目: ウェアラブル四肢外骨格ロボットの考察と重要技術に関する研究
概要: 近年,ウェアラブル四肢外骨格ロボット(Wearable Human Extremity Exoskeleton: WHEE)の研究開発は注目を集め、多くの研究者が取り組んでいます。しかし、製品化されたものは殆どなく、WHEEの普及を妨げる課題を整理する必要があります。本セミナーの前半では、これまでのWHEEの研究開発を、健常者の機能拡大と障害者の補助・回復との二つの観点から考察します。さらに、WHEEのキーテクノロジーである生体模倣機構の設計、動作意図の予測,制御戦略などを概観します。後半では、南京理工大学で行ってきたWHEEの研究開発を紹介します。私たちはWHEEの動きやすさと安全性および軽量化を考慮した生体模倣機構の設計方法を確立しました。また、動作の柔軟性と補助効率を考慮した制御戦略を構築しました。これらの方法の有効性を示すために、WHEEの試作機を用いた実験結果を紹介します。
参加: 参加費無料,予約不要
問合せ 山田幸生,Tel: 042-443-5220,  e-mail: yukioyamada@uec.ac.jp

第72回セミナー

日時: 2019年1月25日(金)13:00 – 14:30
場所: 電気通信大学 東3号館306会議室
講師: 濱西 伸治(仙台高等専門学校・機械システム工学科・准教授)
司会: 小池 卓二 教授
題目: ゆりかごからグランド・ジェネレーションまで -聴覚のメカニクスを医療・福祉・スポーツへ-
概要: この世に生を受けた私たちは,誰もが健康に育ち,若々しく年を重ね,そして豊かな知識と経験を持ちながら人生を楽しみたいと願っています.そのような人生を過ごすために,私たちの体は,実に様々な高度な機能を協調させながらサポートしてくれています.本セミナーではその中でも“聴覚”に着目します.自身で聴こえを意思表示することができない赤ちゃんに対し,聴こえをどのように診断するか?子供から年配まで様々な世代で愛好者が多い剣道が聴覚に及ぼす意外な影響とは?そして良好なコミュニケーションを提供してくれる新しい補聴器とは?これまでの自身の研究成果をご紹介しながら,ゆりかごからグランド・ジェネレーションまで人生を充実したものにするための“聴覚”の可能性を一緒に考えていきたいと思います.
参加: 参加費無料,予約不要
問合せ 山田幸生,Tel: 042-443-5220,  e-mail: yukioyamada@uec.ac.jp

第71回セミナー

日時: 2019年1月23日(水)13:00 – 14:30
場所: 電気通信大学 東3号館306会議室
講師: 渡邉 大(京都大学 大学院医学研究科 生体情報科学講座・教授)
司会: 田中 繁 教授
題目: 意思決定・意思伝達の神経回路基盤解明への生物学的アプローチ
概要: 大脳皮質-基底核神経回路は様々な高次脳機能発現に中心的な役割を果たしていると考えられていますが、詳細なメカニズムについて不明な点が多い。その一因として、大脳皮質および基底核が極めて多様な神経細胞サブタイプから構成されており、さらに各神経細胞の興奮性や回路連絡は一定ではなく可塑的に変化することが挙げられます。したがって、その回路機構を理解するためには、単一細胞の精度で神経活動を計測し、さらに可塑性関連細胞内シグナルの動態やそれに伴う神経情報の推移を捉えることが重要です。本セミナーでは、大脳皮質-基底核神経回路の機能解析を目的として開発したイメージング技術とともに、私達がこれまでに進めてきた意思決定・意思伝達に関する知見について紹介します。
参加: 参加費無料,予約不要
問合せ 山田幸生,Tel: 042-443-5220,  e-mail: yukioyamada@uec.ac.jp