第16回

日時: 2014年11月13日(木)
場所:
講師: Dr. Andrew Subduhi (Associate Professor, Department of Biology, University of Colorado, Colorado Springs)
司会: 狩野 豊 教授
題目: Acute mountain sickness: mechanisms and prevention(急性高山病:メカニズムと予防)
概要: Dr. Subduhiは,低酸素や脳をテーマとした研究を精力的に行っている.これまでに,低酸素環境下での脳血流や脳の自己調節能,高地順応などに関する数多くの研究論文を発表しており,近年では,Altitude Omics Projectにおいても中心的な役割を果たしている.今回のセミナーでは,急性高山病のメカニズムと予防に関する研究を中心にお話いただく.

第15回

日時: 2014年10月25日(金)
場所:
講師: 牛田多加志 氏(東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センター 再生医療工学部門・教授)
司会: 山田幸生 特任教授
題目: 再生医療における3要素+1要素
概要: 再生医療における基盤技術は,いかに細胞を分化コントロールするか,そしていかに組織構築を行うか,これらの2つの目標を実現するものとして開発が進められている.再生医療においては3要素というものが存在する.第一の要素は細胞ソースである.これは再生医療というコンセプトの根幹をなすものであり組織再生の中核をなすものである.2番目としては3次元組織を構築するための培養担体が挙げられる.そして3番目としては細胞増殖因子やサイトカインに代表される生化学因子が挙げられる.一方,4番目の要素として注目を集めつつあるのが,物理刺激因子である.細胞は生体中で様々物理的な刺激を受けており,生化学因子と同様に細胞分化および組織再生をコントロールすることが知られている.この3要素+1要素を総合的に組み合わせることにより,細胞の分化コントロールおよび組織再生が達成されると考えられており,これら3要素+1要素について概説する.

第14回

日時: 2014年9月26日(金)
場所:
講師: 神谷和作 氏 (順天堂大学医学部耳鼻咽喉科学講座 准教授)
司会: 小池卓二 准教授
題目: 遺伝子と神経疾患・聴覚障害の分子メカニズム
概要: 神経系では電気信号の伝達により脳(中枢)と感覚器等末梢の間で様々な情報シグナルの発生・伝達を行っている.多くの神経シグナルはイオンの移動を電気信号に変換することにより電位の発生と伝達を制御するが,そのためには細胞の内外や隣り合う細胞間でのイオンの移動を制御する様々なチャネル分子が重要な役割を担っている.そのため多くの遺伝的神経疾患,感覚器疾患ではチャネル遺伝子の変異が原因となっている.中枢神経(脳)疾患では特に遺伝性てんかんの原因の多くにチャネル遺伝子やその制御因子の変異が同定されており,てんかん≒チャネロパチー(チャネル病)という考え方もある.一方で末梢神経系・感覚器の聴覚神経系においてもイオンチャネル遺伝子の変異で発症する遺伝性疾患が多い.中でも内耳のイオン輸送ネットワークを形成するギャップ結合チャネルの構成因子,コネキシン26遺伝子の変異は遺伝性難聴の世界最大の原因となっている.本セミナーでは神経系疾患とチャネル遺伝子について,これまでと最近の知見を解説する.

第13回

日時: 2014年7月25日(金)
場所:
講師: 松本有央 氏 (産業技術総合研究所・ヒューマンライフテクノロジー研究部門 主任研究員)
司会: 宮脇陽一 特任准教授
題目: サル下側頭葉における階層的なカテゴリー分類
概要: 人間の顔を認知する機能は,社会生活を送る上で重要である.顔認知の脳内情報処理機構を解明するためには,顔画像に操作を加えた画像を呈示する手法が有効であると考えられる.例えば,顔を倒立させた画像を呈示すると,正立画像に比べて個体や表情の認知能力が低下することが知られている(倒立効果).本研究では,顔の倒立効果が下側頭葉における階層的なカテゴリー分類に影響をあたえるかを調べた.そのために,2頭のアカゲザルの下側頭葉から119個のニューロンの活動を記録した.50msの時間窓内の個々のニューロンの平均活動を要素とする119次元のベクトルを呈示した画像毎に作成し,クラスタリングを適用した.その結果,画像呈示後[115, 165]msの時間窓で,ヒトとサルと図形の3つのクラスターが最も離れた.正立画像に対して,ヒトの個体とサルの表情を表すクラスターが[140, 190]msの時間窓で最も離れた.倒立画像に対しては,ヒトの個体とサルの表情のクラスターの分離度が低かった.この結果は,下側頭葉のニューロン活動で観察された倒立画像に対する詳細な分類のクラスターの分離度の低下がヒトの心理実験で観察される倒立効果を起こす可能性を示唆している.

第12回

日時: 2014年6月27日(金)
場所: 東3号館306会議室
講師: 瀧田正寿 氏 (産業技術総合研究所・ヒューマンライフテクノロジー研究部門 主任研究員)
司会: 下条 誠 教授
題目: 高次脳機能の仕組みを考える-前頭前野の生物学的構造から-
概要: 高次脳機能を発揮する前頭前野は,解剖学的に感覚器からも運動器からも最も遠いという特徴がある.その神経回路は,他領域から広く感覚由来情報を集約し,前頭前野で細胞レベルの情報処理を介し,他領域へ運動関係情報を配分し,認知行動を形成する.前者の1つ,海馬-前頭前野路は,ラットの作業記憶に必須,また,増強/抑圧の双方向性シナプス可塑性を呈する.電気生理的解析から,本経路は海馬の中間/腹側を起始とする2つのサブルートを有し,前頭前野が互いを集約する(cf. Takita, Fujiwara & Izaki 2013).この集約構造を主題として,ラットやヒトの前頭前野が高次脳機能を発揮する仕組みを考察し発表する.

第11回

日時: 2014年5月30日(金)15:00-16:30
場所: 東3号館306会議室
講師: 中村 整 氏 (先進理工学専攻 教授)
司会: 丹羽治樹 特任教授
題目: 化学感覚の情報変換および関連神経機構
概要: 嗅覚と味覚が,それぞれ空中と水中に浮遊する化学物質が感覚神経に吸着することによって始まることが明らかになったのはまだそんなに古い話ではない.演者もその研究史の早い部分で貢献することができたが,今日嗅細胞や味細胞の情報変換機構は一通りの決着を見ている.現在我々の研究室では,それらの感覚受容細胞の内部だけではなく,組織中の嗅細胞や味細胞が全体の中でどのように機能しているかを明らかにすることを目的として研究をおこなっている.セミナーでは先述の歴史的流れを簡単にご紹介した後,現在の取り組みについてご紹介したい.

第10回

日時: 2014年4月25日(金)13:00-14:30
場所: 東3-306号室
講師: 正本和人 氏 (知能機械工学専攻 准教授)
司会: 山田幸生 特任教授
題目: 光と脳血流~可視化から操作に向けて~
概要: 正常な脳の血液循環は,脳が正しく機能するための生命線である.とりわけ,神経細胞近傍の微細な血液循環を正常に保つことが,脳卒中や認知症の予防において重要である.レーザー顕微鏡を例とした光技術の進歩に加え,多彩な蛍光タンパクの応用によって,脳の微小循環と細胞活性を高い時間空間分解能で可視化する事が可能になった.また,光によって細胞活性を人為的に操作する光遺伝学の技術は,細胞間に働く因果関係を明らかにする研究手法である.本研究セミナーでは,レーザー顕微鏡を用いたげっ歯類の脳血流に関する光イメージング研究と,さらに脳血流の操作による研究展開に関して概説する.

第09回

日時: 2014年2月24日(月)13:00~14:30
場所: 東4号館802室
講師: 惣谷和広 氏 (独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター 大脳皮質回路可塑性研究チーム・専門職研究員)
司会: 田中 繁 特任教授
題目: 抑制回路を介したコリン作動性ニューロンによる覚醒脳の動作制御機構
概要: 大脳皮質神経回路網におけるGABAニューロンの機能は,単に神経回路網の活動レベルを抑制するだけではなく,興奮性ニューロンの特徴選択的な情報処理や生後発達初期の感受性期における神経回路網の成熟に重要な役割を果たすことが想定されている.しかし,GABAニューロンが3次元空間の神経回路網内にどのように分布し,その作用はどの程度の広がりを持つか?そもそも大脳皮質情報処理機構における抑制の役割は定量的に直接的に何なのか?大脳皮質神経回路網動作原理における抑制系回路の機能に関する重要な問題は,未だ解明されていない. そこで我々は,「in vivo二光子励起機能的Ca2+イメージング法」とチャネルロドプシンを用いた光による神経細胞刺激法を駆使し,神経回路網の「構造と機能」という視点からGABAニューロンの機能解析を行い,抑制系による大脳皮質神経回路網の動作制御機構の解明を目指してきた. 大脳皮質神経回路網の動作制御機構を理解する上で,覚醒脳からの神経活動を細胞レベルで計測し解析することは重要である.そこで今回は,げっ歯類における大脳皮質初期視覚野の興奮性ニューロンとGABAニューロンの視覚応答反応を麻酔時と覚醒時で計測し解析を行った. その結果,GABAニューロンの視覚応答性が,麻酔時よりも増大し,視覚刺激に応答する信頼度も増強した.それに対し,興奮性ニューロンは,麻酔時と覚醒時で視覚応答性に変化はなかったものの,視覚刺激に対して視覚応答している時間の長さが短縮された. 次にこれらの反応特性の違いに前脳基底部(Basal Forebrain: BF)からのコリン作動性ニューロンの活動が関わっているのかどうかを検討するため,BFを電気刺激またはチャネルロドプシン刺激を行うことによって,麻酔下で興奮性ニューロンとGABAニューロンの視覚応答に対するBF刺激の効果を解析した.またさらにBF刺激の効果がどのレセプターを介しているのかを調べるため,急性スライスによる薬理学的実験を行った. その結果,脳の覚醒効果は,BFのコリン作動性ニューロンの活動が,大脳皮質初期視覚野1層ではニコチンレセプターを介して,また,2/3層ではニコチン/ムスカリンレセプターを介して,直接的にGABAニューロンの活動に作用することによって,興奮性ニューロンの視覚応答特性を修飾するという,抑制回路が介在する新しい脳神経回路網動作制御機構の一端が明らかとなった. 今回の発表は,我々が用いている「in vivo二光子励起機能的Ca2+イメージング法」やチャネルロドプシン神経細胞刺激法といった光を用いた新しい生理学的な手法の紹介をし,実際にこれらの手法を用いて明らかとなった覚醒脳の神経回路網動作制御機構を「ニューロモジュレーター回路-抑制回路-興奮性ニューロン」といった回路網レベルの視点から報告する予定である.

第08回

日時: 2014年1月17日(金) 13:00~14:30
場所: 東4号館802室
講師: 臼井 正樹 氏(神奈川県立保健福祉大学 教授)
司会: 横井浩史 教授
題目: 介護福祉の目指すこと―韓国の介護問題を通して考える―
概要: 介護福祉の目指すことについて,以下のような観点から講演を行います. ・韓国を定期的に訪問して考えたこと ・「介護福祉」の現在地は何処か ・レイニンガー(Leininger)の看護論「文化ケアの多様性と普遍性」 ・日本と韓国の高齢者介護の現状 ・介護福祉に求められるものは何か ・介護福祉に対する期待

第07回

日時: 2013年12月20日(金) 13:00~
場所: 東4号館802室
講師: 姜 銀来 氏(高知工科大学 総合研究所 特任講師)
司会: 横井 浩史 教授
題目: 超高齢社会における健康づくり ―認知機能と歩行機能に着目して―
概要: 高齢社会の問題は,決して年齢の問題ではなく,如何に健康づくりを実現することが重要な課題です.そのため,脳・身体の発症を早期発見し,速やかに発症を止め,更に機能を回復するのが,高齢社会の問題解決の切口だと考え,講演者は高齢社会における健康づくりを大目的として,認知機能と歩行機能に着目して研究してきました.本講演では,講演者は下記の研究課題について,報告します. (1)視覚補間能力の定量化と脳の健康検査への応用 (2)歩行訓練機を用いた自主訓練における要訓練者の意図同定法 (3)歩行能力の回復の定量評価法 (4)仮想歩行による大脳運動野の活性化法 また,今後取り組んでいく研究課題についても紹介します.