日時: 2017年8月4日(金) 13:00-14:30
場所: 電気通信大学 東3号館306会議室
講師: 深井朋樹(理化学研究所 脳科学総合研究センター脳回路機能理論研究チーム・リーダー)
司会: 田中 繁 特任教授
題目: 外界をモデル化する脳の回路メカニズム ―海馬と大脳皮質
概要:  脳はどのようにして外界の特徴を捉え、モデル化しているのであろうか。その神経メカニズムはどのようなものなのであろうか。この問題は脳が外界からの入力情報をどのように学習しているのかということと密接に関係している。そこで脳が外界をモデル化する仕組みについて、私の研究室が取り組んでいる二つの問題を紹介しながら考えたい。はじめに海馬の場所記憶の形成について、プリプレイの概念について説明し、我々のモデル化の試みとそれにより明らかになった計算論的利点について紹介する。空間探索中のマウスやラットの海馬では時系列学習が起こり、これらの時系列は従来、学習によって生じるものと考えられてきたが、プリプレイが主張するのは、時系列記憶の「種」は、もともと神経回路構造(自発発火)に備わっており、学習によって新たに生成する必要はないというものである。プリプレイによる記憶を実現する2コンパートメント・ニューロンの回路モデルを構築し、素早い記憶形成(ワン・ショット記憶)において樹状突起が重要な役割を果たすことを示す。次に時系列入力から繰り返し出現する「チャンク構造」を検出するための神経回路モデルを紹介する。このモデルは教師付き学習であるリザーバ計算を拡張して時系列の教師なし学習を実現したもので、ランダムな時系列に埋め込まれた複数の規則的配列を読み出すことが可能になる。モデルの回路構成には人工的な匂いが残るが、大脳皮質と大脳基底核ループによる時系列学習の機能を一部実現していると考えている。
参加: 参加費無料,予約不要
問合せ 山田幸生,Tel: 042-443-5220,  e-mail: yukioyamada@uec.ac.jp