Date and Time: February  24 (Wed.), 2021, 14:40 – 16:10
Place: Online (Zoom)
Speaker: Tatsuhiko HARADA (Professor, International University of Health and Welfare)
Chair: Prof. Takuji KOIKE
Title: The mechanisms of hearing from a perspective of biological evolution
Abstract: 聴覚についてはじめて学ぶとき、音の情報を神経に伝えるだけのしくみがどうしてこれほど複雑な構造となっているのだろうとだれもが感じると思います。すべての生物はひとつの細胞から進化を経た結果現在に至っており、その過程は今も母体の中で出生するまでに繰り返されています。したがって聴覚の仕組みをよく理解するには、聴覚器がどのように進化して今に至っているのかを知ることは不可欠であり、同時に進化という名のイノベーションがいかにして生じてきたのかを知ることは、工学を学び研究されている人たちにとってヒントになることが少なからずあると思います。
今回の講義では、脊椎動物における聴覚系の進化を主に扱います。はじめての脊椎動物となった魚類において平衡覚をつかさどる前庭器を用いて水中音響の聴取が可能になったこと、生物の陸上化に伴い出現した両生・爬虫類において中耳構造が出現したこと、鳥類においてこれがさらに発展しより高度な機能を持つようになったこと、他方で哺乳類において顎構造の変化から異なる中耳構造と特有の聴覚器官である蝸牛を持つに至ったことなどを中心とした進化の過程を解説して参ります。それらの途中でなにが得られ、何が失われたのか、何に促されて進化は起きたのか、そしてそれぞれの生物はどのような方略をとった結果進化につながっていったのか、これらについても一緒に考えてゆきたいと思います。