視覚心理物理実験基礎(第21-22回)
レポーター:森下壮一郎
「視覚心理物理実験基礎」では,錯視図形の主観的等価点(観察者にとって心理的に等しく感じられる点)を計測する実習を行いました.具体的には,有名な錯視図形の一つであるMuller-Lyer錯視(両端に矢羽線がついた同じ長さの線分で,矢羽線が外向きのものは長く,内向きのものは短く見える錯視)を対象に,Matlabを用いた実験を行います.
1日目は,まず座学で,心理物理学の意義や位置づけ,また視覚刺激のうちでも特に錯覚について,古典的なものから音刺激との組み合わせによるものまでの紹介,主観的等価点の説明と,その代表的な計測法(調整法,極限法,恒常法)についての,宮脇陽一准教授によるレクチャーが行われました.次にMatlabのPsychophysic toolboxを用いて実装されたプログラムで,Muller-Lyer錯視の主観的等価点の計測を恒常法で行います.観察者は,ランダムに提示される2本の線分のうち,長く感じられる方を回答します.すると,実際の長さの差に応じた回答率を元に錯視の程度を表す精神測定関数が計算されます.
2日目は,前回に引続き実習を行いました.実験条件を統制しないと一定の結果が得られないことを確認しながら,どの条件を統制すれば再現性があるか,3つのグループに分かれて各自で試行錯誤を繰り返し,得られた結果について各グループがショートプレゼンを行いました.最後に講評として,視覚心理物理実験において重要な要素についての解説が宮脇准教授により行われ,錯視量が最も大きくなった条件を考案したグループにMVP(Most Vivid Perception) 賞,被験者間の分散が最も小さくなった条件を考案したグループにLVP (Least Variable Perception) 賞が与えられ,賞状が贈呈されました.