蛍生物発光基質の合成と機器分析(2)

実施場所:東6-737室

レポーター:横井浩史

本日は、物質の構造と性質を調査する方法について、丹羽先生の講義で学ぶとともに、軽部さんの指導で、昨日合成した試料が、目的とした物質であるかどうかについて分析を行いました。

分析法としては、赤外光分析装置(IR)、エレクトロスプレーイオン化質量分析装置(ESI)、核磁気共鳴分光装置(NMR)を用いて、分子の構造と性質を調査しました。実験室は東6号館1階の研究設備センター基盤研究設備部門において、行いました。

これら3種類の分析法を用いることにより、それぞれ、IRにより分子を構成する部分構造の特徴的な吸収強度・吸収エネルギー、ESIにより分子量、および、NMRにより化学結合の状態を分析しました。

私は途中退席しましたために、IRとESIについては参加できませんでしたが、NMRについては、間に合いました。NMRは、スピン量子の励起状態に対する原子核のラーモア周波数(電子・原子核・原子などの粒子の持つ磁気モーメントが外部磁場によって歳差運動の共鳴周波数)を測定することにより、資料の中にどのような化学結合が含まれているかを定量化する方法であり、PCの画面上に吸収スペクトルが周波数応答性を示すグラフとなって表示されます。

そこでは、軽部さんが、資料から計測したグラフを示しながら、水素と炭素同位体の吸収スペクトルのグラフを拡縮しながら、各化学結合に特徴づけられる波形について、詳しく解説してくださいました。グラフには、丹羽先生の解説にあった励起状態の特徴的な分岐現象がはっきりと表れており、同位体原子が周囲の原子とどのような相互作用を持つかがよくわかりました。周囲の原子からの拘束が強い場合には電子雲が共有されることにより、エネルギーの固有状態が縮退し、グラフの山が重なって表示されること。結果として、山の数が減り、二項分布となること。その逆に、周囲の原子から距離が遠かったり、拘束が弱い場合には、縮退することなく、一つのスピンに対して2つずつの固有状態を数えることができること。現実には、とても複雑な縮退の状態が存在しますので、グラフの状態を詳しく分析すれば、どの電子軌道のエネルギー順位が重なっているのかまで理解できるとは思うのですが、今回は、ここまでで時間切れとなりました。大平さんは、グラフの山の部分が、どの化学結合に対応しているのかを詳しく質問していましたので、より詳しいレポートを書いてくれると期待しています。

結果としましては、今回の合成実験でできた物質は、ルシフェリンであることが判明し、全員成功との結論を得ました。

第2回