Date and Time: Jul. 24 (Fri.), 2015, 13:00 – 14:30
Place: Meeting room #306, Building E-3, UEC
Speaker: Dr. Toru Takahata (Prof., Zhejiang University, Interdisciplinary Institute of Neuroscience and Technology (ZIINT), China)
Chair: Prof. Shigeru Tanaka
Title: Comparative anatomy of primate visual cortices using gene expression patterns
Abstract: 大脳皮質は哺乳動物、特に霊長類において急速な進化を遂げ、高次の知能や理性の源となっている。霊長類の大脳皮質はどのように他の哺乳動物と違っており、またそのような違いはどのような分子基盤によって産み出されるものであろうか。ブロードマンによれば、げっ歯類の『大脳皮質領野』の数は20-30なのに対し、霊長類では40-50に及ぶとされ、それぞれ運動の制御や視覚・聴覚の認知など機能分担がされている。私及び所属グループは大脳皮質領野の進化を明らかにするため、それぞれの領野特異的に発現する遺伝子のスクリーニング解析を行った。その結果、一次感覚野、特に一次視覚野と連合野の間に相補的な遺伝子発現のプロファイルがあることを明らかにした。このプロファイルは霊長類に特有で、他の哺乳動物には観察されなかった。この結果は霊長類の大脳皮質領野の分化が分子レベルではっきりと異なることを示している。
そして私は、神経活動依存的な遺伝子c-Fosの発現パターンを観察すると神経活動状態のマップが高解像度で組織学的に観察できることに着目した。私はこの手法を用いて、『眼優位性カラム』という霊長類一次視覚野の機能単位の内部に、さらなる微小な神経回路、『ボーダーストリップ』があることを示すことができた。さらに、今までは一部の食肉類と高等霊長類にしか存在しないと考えられていた眼優位性カラムが実際にはかなり広く種間で保存されていることを示した。霊長類脳と非霊長類脳の本質的な違いはどこにあるのか。これらの新しい観察から、霊長類大脳皮質の進化について考察していく。