第38回

日時: 2016年5月18日(水)13:00-14:30
場所: 電気通信大学 東3号館306会議室
講師: 長谷和徳(首都大学東京 理工学研究科機械工学専攻・教授)
司会: 岡田英孝 教授
題目: 神経筋骨格モデルによるヒト歩行シミュレーションとその応用
概要: ヒトの歩行運動などの身体運動を再現するコンピュータシミュレーションモデルとその応用例について紹介します.このシミュレーションでは身体筋骨格系の力学特性をモデル化し,順動力学計算によって身体運動を生成します.運動制御系は歩行などのリズム運動発生機序をモデル化した神経振動子,位相振動子,勾配系などの特性を持ちます.シミュレーションモデルの例として,ヒトの二足歩行モデル,走行モデル,高齢者歩行分析,義足歩行などを紹介します.また,歩行以外の応用例として,車両乗員モデルなどについても言及します.
参加: 参加費無料,予約不要
問合せ 山田幸生,Tel: 042-443-5220,  e-mail: yamada@mce.uec.ac.jp

第37回

日時: 2016年4月15日(金)13:00-14:30
場所: 電気通信大学 東3号館306会議室
講師: 福地 守(富山大学 大学院医学薬学研究部(薬学) 分子神経生物学研究室・助教)
司会: 牧 昌次郎 助教
題目: 脳由来神経栄養因子BDNF遺伝子発現制御機構の解明~脳・神経系の高次機能発現や疾患原因の解明そして創薬研究を目指して~
概要: 神経栄養因子ファミリーの一員であり、記憶や学習に代表される高次脳機能発現に必須の因子である脳由来神経栄養因子(BDNF: Brain-derived neurotrophic factor)は、様々な神経・精神疾患との関連性も深く、これら疾患のバイオマーカーや創薬ターゲットとしても注目されている。我々は、特に神経細胞におけるBDNF遺伝子の発現制御メカニズムに着目した研究を進めている。本セミナーでは、これらの研究成果を紹介しながら、BDNF遺伝子発現制御と脳・神経系の高次機能発現や疾患との関わり、さらには神経・精神疾患の創薬を目指した我々の現在の取り組みも合わせて紹介したい。
参加: 参加費無料,予約不要
問合せ 山田幸生,Tel: 042-443-5220,  e-mail: yamada@mce.uec.ac.jp

第36回

日時: 2016年3月24日(木)13:00-14:30
場所: 電気通信大学 東3号館306会議室
講師: 高木岳彦(東海大学 医学部 外科学系整形外科学 講師.本センター客員准教授)
司会: 横井浩史 教授
題目: Nerve-Machine Interfaceと手外科
概要: 先天性の欠損肢や外傷性の切断肢は整容面以外にも文化的な生活を営む上で大きな障害となる。細かい血管縫合等の手術技術を駆使した足の指の移植や手の同種移植を国内でルーチンに適用させるのは困難である現状では、運動と知覚機能を工学系の技術を用いて外部装置に置き換える筋電義手で克服可能と考える。末梢神経が司る上肢の運動と感覚の機能代替を行うこと(Nerve-Machine Interface)に主眼を置き、筋電図と手指運動パターンとの対応関係を個々の事例にあわせ獲得させる義手を開発しているが、さらに個々の事例にあわせ切断肢に残された筋に効果的に神経移行術(Targeted muscle reinnervation)を行うことで、共同研究を行ってきた工学技術と手外科医としての技術を融合させて、より自分の手指のような感覚を感じられるような機能を有する装置を目指している。その現状と今後の展望について紹介したい。
参加: 参加費無料,予約不要
問合せ 山田幸生,Tel. 042-443-5220,  e-mail: yamada@mce.uec.ac.jp

第35回

日時: 2016年3月1日(火)13:00-14:30
場所: 電気通信大学 東3号館306会議室
講師: 神崎亮平(東京大学先端科学技術研究センター 副所長・教授)
司会: 中村 整 教授
題目: 昆虫とロボットの融合で探る脳科学~脳を創り,理解し,活用する~
概要: 昆虫はその微小な寸法という制約の中で,感覚・脳・行動を発達させ,さまざまな環境下で適応的な機能を進化させてきた.このような昆虫が獲得した感覚・脳・行動の機能や機構の解明は,生物学的に重要なだけではなく,工学設計においても重要な手本となり,その設計には学ぶべきことが多い.昆虫の嗅覚による適応能力を評価し,その神経機構を解明するための新しいアプローチである「昆虫-ロボット融合システム(サイボーグ昆虫)」の研究や,昆虫脳をスーパーコンピュータ「京」に再現することで理解し,活用する研究を紹介する.また,遺伝子工学技術により昆虫の優れた生体機能を活用した匂いセンサや,昆虫自体をインテリジェントなセンサ(センサ昆虫)に改変する研究にも触れ,昆虫科学が拓く脳科学の世界に迫る.
参加: 参加費無料,予約不要
問合せ 山田幸生,Tel. 042-443-5220,  e-mail: yamada@mce.uec.ac.jp

第34回

日時: 2016年2月26日(金)13:00-14:30
場所: 電気通信大学 東3号館306会議室
講師: 張 定国(上海交通大学 機械工学科・准教授)(Dingguo Zhang, Ph.D, Associate Professor, Institute of Robotics, School of Mechanical Engineering, Shanghai Jiao Tong University, China)
司会: 姜 銀来 特任准教授
題目: Electromyography (EMG) Applications for Rehabilitation and Prosthesis(リハビリと義肢に対する表面筋電図の応用)(英語で講演)
概要: ヒューマン・マシン・インターフェースは,生体信号を使ってロボットハンドや義手のような外部機器を制御する学際的研究分野です.その中で,表面筋電図(EMG)を利用した研究が重要視されています.表面筋電図は,筋収縮に伴う筋繊維の電気活動を皮膚表面に置いた電極で非侵襲に計測された信号で,筋電信号を用いた制御(筋電制御)は切断者や障害者のための義肢とリハビリ装置を制御するのに有効な手段として研究されています.ノイズが混入した表面筋電図と制御指令とを関連づけることは,筋電制御における難題の一つです.本講演は,多機能義肢を高精度で制御する筋電制御アルゴリズムの最新の研究を解説し,また,機能的電気刺激(FES)を用いたリハビリシステムについても紹介します.

第33回

日時: 2016年1月21日(木)13:00-14:30
場所: 電気通信大学 東3号館306会議室
講師: 工藤 佳久(東京薬科大学・名誉教授)
司会: 丹羽 治樹 特任教授
題目: 脳機能発現におけるグリア細胞の役割
概要: 20世紀末までの神経科学研究によって、脳機能はニューロンが織りなす神経回路から産み出されるものと認識されるようになっている。しかし、脳内にはニューロンをはるかに上回る数の多様なグリア細胞が存在することを忘れてはならない。これらのグリア細胞はニューロンと同時代に発見されているが、電気的には不活性であるためか、これらの細胞の中枢神経系における機能は長い間、過小評価されてきた。もちろん、主要なグリア細胞であるアストロサイト、オリゴデンドロサイトそしてミクログリアには脳内環境維持や神経伝達速度促進など多様な機能が認められ、脳機能発現における脇役としてのその存在意義は認識されている。しかし、20世紀後半から細胞内カルシウム濃度研究法や二光子レーザー顕微鏡などの技術の発達によって、グリア細胞の新しい機能が浮き彫りにされてきた。グリア細胞が多様な神経伝達物質受容体を発現し、ニューロンの活動に応答すること、自らも伝達物質を遊離することによってニューロン活動を修飾し、シナプスの再編成に積極的関与することなど高次脳機能発現に直接的に関与する事実が相次いで発見されている。このセミナーではグリア細胞がもつ多様な能力について解説し、それを基にグリア細胞の機能を考慮した“正しい”脳機能研究について討論したい。

第32回

日時: 2015年12月17日(木)13:00-14:30
場所: 電気通信大学 東3号館306会議室
講師: 田中 繁(脳科学ライフサポート研究センター・教授)
司会: 山田 幸生 特任教授
題目: 一次視覚野自己組織化における未解決問題に対する試論
概要: 哺乳類一次視覚野のニューロン応答特性や機能的構築については、1960年代以降膨大な研究蓄積があるが、未だに明確な説明がなされていない実験事実がある。そこで本発表では、従来の理論研究では説明できない実験事実を明らかにするとともに、その問題解決に向けて、最近、私と共同研究者が進めているいくつかの理論研究について紹介したい。
哺乳類一次視覚野のニューロンは、その反応特性から単純型細胞と複雑型細胞の二つのカテゴリーに分類されている。従来、複雑型細胞は方位選択性を示すが、単純型細胞とは異なり、呈示するバー刺激の位置に依存しないことが知られている。この性質を説明するためには、単純型細胞受容野の空間位相をプーリングする必要がある。しかしながら、ヘッブ学習に基づく自己組織化モデルでは、様々な位相を持つ単純型細胞からのシナプス入力が一つのニューロンに収斂せず、位相に応じて棲み分けてしまう。すなわち、単純型細胞からは単純型細胞しか形成されない。そこで、我々は、時定数の長いNMDA受容体サブユニットNR2Bの効果に着目し、時間的なプーリングを利用して複雑型細胞の受容野を再現することに成功した。
ネコ・フェレット・サルでは最適方位がほぼ連続的に表現される方位マップが存在することは知られていたが、最近のイメージング研究によって、マウスやラットに代表されるげっ歯類では、類似の方位に反応するニューロンが隣接せず、いわゆるsalt-and-pepperタイプのランダムな表現を呈することが分かってきた。このsalt-and-pepperタイプの方位表現を再現するために、「げっ歯類の皮質内興奮性結合について、個々のシナプス伝達効率は高いがsparseである」という仮説を検討した。シミュレーションによると、興奮性結合確率が0.1よりも大きい場合には方位マップが形成されるが、0.1よりも小さくなるとげっ歯類の視覚野に見られるようなsalt-and-pepperタイプ表現が再現された。また、磁性研究で用いられるm-成分スピングラス理論を援用して解析的に計算したところ、salt-and-pepperタイプの方位表現は、sparsenessによって引き起こされる、最適方位がランダムに凍結したガラス状態であることが分かった。すなわち、皮質内興奮性結合のsparsenessが、種に依存した方位表現の形成に重要であることが示唆された。

第31回

日時: 2015年10月15日(木)13:00-14:30
場所: 電気通信大学 東3号館306会議室
講師: 羅 志偉 (Zhiwei Luo)(神戸大学 自然科学系先端融合研究環・教授)
司会: 姜 銀来 准教授
題目: 高齢社会を支える人間と接するロボットの研究開発(Development of Human Interactive Robots for Aging Society)
概要: Human interactive robots are highly expected to play important roles in human health, such as social welfare support, training and health promotion, as well as health prediction, prevention and rehabilitation. This talk describes on human’s motor functions, such as balance, walking and running, and cognitive functions change with the increase of age using advanced measurement and computer simulation technologies, such as biofeedback, NIRS and immersion-type interactive dynamic simulation. It will show examples of our robotics researches related to above applications such as an up arms’ rehabilitation robot system, a virtual shopping street to evaluate the elderly people’s high order brain cognitive functions in their everyday life and so on.(発表は日本語)

第30回

 

日時: 2015年9月11日(金)13:00-14:30
場所: 電気通信大学 東3号館306会議室
講師: 饗庭 絵里子氏(情報システム学研究科 情報メディアシステム学専攻 人間情報学講座・助教)
司会: 小池 卓二 教授
題目: 演奏家とその聴覚
概要: プロ演奏家の演奏技能は,人間の様々な能力を駆使した上で成り立っている。また,それらの能力を獲得するためには,運動のみならず,聴覚などの感覚の鍛錬も非常に重要である。例えば,美しい和音を演奏するためには,複数の音のタイミングを揃える必要がある。一方,ある音だけを際立たせるためには,複数の音の中から際立たせたい音だけを他の音に比べて僅かに先行させるという技術も必要とされる。このように,演奏家は多くの音のタイミングを細かく制御するため,音のオンセットの同時性など,音の時間的情報に常に注意深く耳を傾けている。従って,演奏家は非演奏家に比べて音の時間的なずれの検出能力に長けていたり,さらには脳波(聴性脳幹反応)にも違いがあらわれるなど,生理学的なレベルでの変化も観察されている。本講演では,この他にも日々の鍛錬によって得られる演奏技能に関する研究を,ピアニストとしての自身の体験や研究成果を交えながらご紹介したい。

第30回

日時: 2015年9月11日(金)13:00-14:30
場所: 電気通信大学 東3号館306会議室
講師: 饗庭 絵里子氏(情報システム学研究科 情報メディアシステム学専攻 人間情報学講座・助教)
司会: 小池 卓二 教授
題目: 演奏家とその聴覚
概要: プロ演奏家の演奏技能は,人間の様々な能力を駆使した上で成り立っている。また,それらの能力を獲得するためには,運動のみならず,聴覚などの感覚の鍛錬も非常に重要である。例えば,美しい和音を演奏するためには,複数の音のタイミングを揃える必要がある。一方,ある音だけを際立たせるためには,複数の音の中から際立たせたい音だけを他の音に比べて僅かに先行させるという技術も必要とされる。このように,演奏家は多くの音のタイミングを細かく制御するため,音のオンセットの同時性など,音の時間的情報に常に注意深く耳を傾けている。従って,演奏家は非演奏家に比べて音の時間的なずれの検出能力に長けていたり,さらには脳波(聴性脳幹反応)にも違いがあらわれるなど,生理学的なレベルでの変化も観察されている。本講演では,この他にも日々の鍛錬によって得られる演奏技能に関する研究を,ピアニストとしての自身の体験や研究成果を交えながらご紹介したい。