第19回

日時: 2015年1月30日(金) 13:00~14:30
場所: 電気通信大学 東3号館306会議室
講師: 松田 信爾 氏(先進理工学研究科 准教授)
司会: 狩野 豊 教授
題目: シナプス可塑性の分子機構の解明と制御法の開発
我々の脳は千数百億個の神経細胞からなる複雑な構造体である。1つの神経細胞は他の神経細胞に連絡してシナプスを作っており、このシナプスで神経細胞間の情報伝達が行われている。シナプスにおける情報伝達の効率は神経活動に依存して増減することが知られている。この現象はシナプス可塑性と呼ばれ、記憶・学習の細胞レベルの基盤ではないかと考えられている。シナプス可塑性の代表的なものとして長期増強(LTP)と長期抑圧(LTD)がよく知られているが、これらのシナプス可塑性の分子実態はAMPA型グルタミン酸受容体の細胞表面の数の増減であることが明らかにされて来た。本セミナーではどのようなメカニズムでAMPA受容体の数の増減が起きるのか、そしてその制御法の開発について最新の研究結果を紹介したい。

 

第18回

日時: 2014年12月19日(金) 13:00~14:30
場所: 電気通信大学 東3号館306会議室
講師: 関 喜一 氏(産業技術総合研究所 ヒューマンライフテクノロジー研究部門 身体適応支援工学グループ・主任研究員)
司会: 阪口 豊 教授
題目: 視覚障害者と音
概要: 視覚障害者にとって音は重要な情報源である。本講では、聴覚による空間認知のメカニズム、視覚障害者のための音サイン、音響信号機、及び歩行補助装置の4つについて説明する。

第17回

日時: 2014年11月25日(火)
場所: 電気通信大学 東4号館802室
講師: 兪 文偉(千葉大学・フロンティア医工学センター・教授)
司会: 横井 浩史 教授
題目: 日常生活で使用できる生体機能補助機器を目指して
概要: 本セミナーでは,日常生活環境で,生体機能補助機器を長時間使用していく場合の問題点を理解し,解決するための計測実験,モデリング,及び結果,考察を説明する.具体的には,日常生活で使用する機能的電気刺激(FES)による歩行補助における刺激部位の選定,刺激効果の持続などの諸問題を触れ,それらを解釈するための計測実験とモデリング実験を述べる.さらに,長期利用を想定した義手や上肢リハビリテーションシステムの構築,特に感覚フィードバックとそれによるメンタルワークロードの評価についても概説する.

第16回

日時: 2014年11月13日(木)
場所:
講師: Dr. Andrew Subduhi (Associate Professor, Department of Biology, University of Colorado, Colorado Springs)
司会: 狩野 豊 教授
題目: Acute mountain sickness: mechanisms and prevention(急性高山病:メカニズムと予防)
概要: Dr. Subduhiは,低酸素や脳をテーマとした研究を精力的に行っている.これまでに,低酸素環境下での脳血流や脳の自己調節能,高地順応などに関する数多くの研究論文を発表しており,近年では,Altitude Omics Projectにおいても中心的な役割を果たしている.今回のセミナーでは,急性高山病のメカニズムと予防に関する研究を中心にお話いただく.

第15回

日時: 2014年10月25日(金)
場所:
講師: 牛田多加志 氏(東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センター 再生医療工学部門・教授)
司会: 山田幸生 特任教授
題目: 再生医療における3要素+1要素
概要: 再生医療における基盤技術は,いかに細胞を分化コントロールするか,そしていかに組織構築を行うか,これらの2つの目標を実現するものとして開発が進められている.再生医療においては3要素というものが存在する.第一の要素は細胞ソースである.これは再生医療というコンセプトの根幹をなすものであり組織再生の中核をなすものである.2番目としては3次元組織を構築するための培養担体が挙げられる.そして3番目としては細胞増殖因子やサイトカインに代表される生化学因子が挙げられる.一方,4番目の要素として注目を集めつつあるのが,物理刺激因子である.細胞は生体中で様々物理的な刺激を受けており,生化学因子と同様に細胞分化および組織再生をコントロールすることが知られている.この3要素+1要素を総合的に組み合わせることにより,細胞の分化コントロールおよび組織再生が達成されると考えられており,これら3要素+1要素について概説する.

第14回

日時: 2014年9月26日(金)
場所:
講師: 神谷和作 氏 (順天堂大学医学部耳鼻咽喉科学講座 准教授)
司会: 小池卓二 准教授
題目: 遺伝子と神経疾患・聴覚障害の分子メカニズム
概要: 神経系では電気信号の伝達により脳(中枢)と感覚器等末梢の間で様々な情報シグナルの発生・伝達を行っている.多くの神経シグナルはイオンの移動を電気信号に変換することにより電位の発生と伝達を制御するが,そのためには細胞の内外や隣り合う細胞間でのイオンの移動を制御する様々なチャネル分子が重要な役割を担っている.そのため多くの遺伝的神経疾患,感覚器疾患ではチャネル遺伝子の変異が原因となっている.中枢神経(脳)疾患では特に遺伝性てんかんの原因の多くにチャネル遺伝子やその制御因子の変異が同定されており,てんかん≒チャネロパチー(チャネル病)という考え方もある.一方で末梢神経系・感覚器の聴覚神経系においてもイオンチャネル遺伝子の変異で発症する遺伝性疾患が多い.中でも内耳のイオン輸送ネットワークを形成するギャップ結合チャネルの構成因子,コネキシン26遺伝子の変異は遺伝性難聴の世界最大の原因となっている.本セミナーでは神経系疾患とチャネル遺伝子について,これまでと最近の知見を解説する.

第13回

日時: 2014年7月25日(金)
場所:
講師: 松本有央 氏 (産業技術総合研究所・ヒューマンライフテクノロジー研究部門 主任研究員)
司会: 宮脇陽一 特任准教授
題目: サル下側頭葉における階層的なカテゴリー分類
概要: 人間の顔を認知する機能は,社会生活を送る上で重要である.顔認知の脳内情報処理機構を解明するためには,顔画像に操作を加えた画像を呈示する手法が有効であると考えられる.例えば,顔を倒立させた画像を呈示すると,正立画像に比べて個体や表情の認知能力が低下することが知られている(倒立効果).本研究では,顔の倒立効果が下側頭葉における階層的なカテゴリー分類に影響をあたえるかを調べた.そのために,2頭のアカゲザルの下側頭葉から119個のニューロンの活動を記録した.50msの時間窓内の個々のニューロンの平均活動を要素とする119次元のベクトルを呈示した画像毎に作成し,クラスタリングを適用した.その結果,画像呈示後[115, 165]msの時間窓で,ヒトとサルと図形の3つのクラスターが最も離れた.正立画像に対して,ヒトの個体とサルの表情を表すクラスターが[140, 190]msの時間窓で最も離れた.倒立画像に対しては,ヒトの個体とサルの表情のクラスターの分離度が低かった.この結果は,下側頭葉のニューロン活動で観察された倒立画像に対する詳細な分類のクラスターの分離度の低下がヒトの心理実験で観察される倒立効果を起こす可能性を示唆している.

第12回

日時: 2014年6月27日(金)
場所: 東3号館306会議室
講師: 瀧田正寿 氏 (産業技術総合研究所・ヒューマンライフテクノロジー研究部門 主任研究員)
司会: 下条 誠 教授
題目: 高次脳機能の仕組みを考える-前頭前野の生物学的構造から-
概要: 高次脳機能を発揮する前頭前野は,解剖学的に感覚器からも運動器からも最も遠いという特徴がある.その神経回路は,他領域から広く感覚由来情報を集約し,前頭前野で細胞レベルの情報処理を介し,他領域へ運動関係情報を配分し,認知行動を形成する.前者の1つ,海馬-前頭前野路は,ラットの作業記憶に必須,また,増強/抑圧の双方向性シナプス可塑性を呈する.電気生理的解析から,本経路は海馬の中間/腹側を起始とする2つのサブルートを有し,前頭前野が互いを集約する(cf. Takita, Fujiwara & Izaki 2013).この集約構造を主題として,ラットやヒトの前頭前野が高次脳機能を発揮する仕組みを考察し発表する.

第11回

日時: 2014年5月30日(金)15:00-16:30
場所: 東3号館306会議室
講師: 中村 整 氏 (先進理工学専攻 教授)
司会: 丹羽治樹 特任教授
題目: 化学感覚の情報変換および関連神経機構
概要: 嗅覚と味覚が,それぞれ空中と水中に浮遊する化学物質が感覚神経に吸着することによって始まることが明らかになったのはまだそんなに古い話ではない.演者もその研究史の早い部分で貢献することができたが,今日嗅細胞や味細胞の情報変換機構は一通りの決着を見ている.現在我々の研究室では,それらの感覚受容細胞の内部だけではなく,組織中の嗅細胞や味細胞が全体の中でどのように機能しているかを明らかにすることを目的として研究をおこなっている.セミナーでは先述の歴史的流れを簡単にご紹介した後,現在の取り組みについてご紹介したい.

第10回

日時: 2014年4月25日(金)13:00-14:30
場所: 東3-306号室
講師: 正本和人 氏 (知能機械工学専攻 准教授)
司会: 山田幸生 特任教授
題目: 光と脳血流~可視化から操作に向けて~
概要: 正常な脳の血液循環は,脳が正しく機能するための生命線である.とりわけ,神経細胞近傍の微細な血液循環を正常に保つことが,脳卒中や認知症の予防において重要である.レーザー顕微鏡を例とした光技術の進歩に加え,多彩な蛍光タンパクの応用によって,脳の微小循環と細胞活性を高い時間空間分解能で可視化する事が可能になった.また,光によって細胞活性を人為的に操作する光遺伝学の技術は,細胞間に働く因果関係を明らかにする研究手法である.本研究セミナーでは,レーザー顕微鏡を用いたげっ歯類の脳血流に関する光イメージング研究と,さらに脳血流の操作による研究展開に関して概説する.